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コラム

横文字の言葉(世界標準ISO)(弁護士 松田 幸子)
  最近色々なところに行く機会が増え,新しい言葉に出会っています。横文字の言葉が多いです。
 例えば,この前は宮崎県人権啓発協議会に行って,「ISO26000」というのを聴いてきました。弁護士なのに知らなかったのかと叱られそうですが,「ISO」とはInternational organization for Standardization(国際標準化機構)のことで,主に企業活動について様々な分野の国際的標準や規格を定める非政府組織(NGO)です。その認証をとることが企業活動の質の向上や社会的信用につながると言われ,認証をとるためのコンサルテイングがひとつのビジネスになっています。有名なのはISO9001(品質マネジメントシステム)ISO14001(環境マネジメントシステム)ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)でしょうか。
 ところで,「ISO26000」は企業だけでなく学校や自治体などを含む全ての組織の行動のあり方の国際的なガイドラインを示したもので「認証」は予定していません。ちょっと他とは性質の違うものです。そこでは,7つの原則として「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダー(利害関係人)の利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」「人権の尊重」を挙げ、これらを行動規範として尊重することを組織に求めています。
 ふーっ!「それ何?」と思ってしまいますね。平たく言うと,「組織や企業はそこに関係する人達(ステークホルダー:利害関係人)の立場を考えて,誰か特定の人達だけが良い思いをするのではなくちゃんとみんなが納得するように物事を決める,決めた内容が反社会的だったり国際的な約束事に反したりしないことは勿論,社会や地球環境にとってもよいものになるようにする,そうやって決めた行動が外から見ても分かりやすいように情報を公開して説明するということだと思います。(全然平たくなっていない?!)企業で言えば,利益だけを考えるのでなく,社会にとって役に立つ製品やサービスを開発提供し,労働者が生きがいをもって働き人間らしい暮らしができるような運営ということでしょうか。
 ところで,東日本大震災は日本がひっくり返ってしまった大変な災害ですが,震災をきっかけに企業のあり方に変化があるのではないかと言われています。企業が呼びかけての募金とか,炊き出しボランテイアを企業が率先してやるとか,従業員のボランテイアを奨励するとか,企業の社会的責任を意識した企業行動が目立つようになりました。こういう動きが今後広がっていき,企業や働き方も変わっていくのかもしれません。どんな働き方になろうとも,みんなが「人間らしく生きられる」ことが最低条件で,「人間らしい」の中味もみんなの共通の理解がいることではありますが。
 社会とか地球は人間と様々な生き物や自然で成り立っているので,全体が調和を持ってやっていかないといけないのでしょう。全体の調和というとき,日本語だけでは世界のことが分かりにくいし,日本のことを世界に向けて伝えることも難しい。だから横文字に慣れないといけないのでしょうね。
 でも,借り物の横文字言葉を使うと疲れますね。何となく「どこかでえらい人が言っているだけで私には関係ないわ」という気分にさせられます。日本語であっても「人権」はまだまだ借り物の言葉かもしれません。自分の言葉になるためには,考えさせられる体験と体験を通じて考えること(一緒じゃないか!?)の積み重ねがいるのでしょう。
 とかく法律用語には借り物の言葉が多いです。昔々大学の法学部に進学したとき,まず「法律用語辞典」と首っ引きで教科書を読んで,全然進まないので嫌になったことを思い出しました。法律で大事なのは「言葉の定義」ですし,「●●法 第2条 この法律で「▼▼」とは「△△△」を言う。」なんていう条文があることも多いので逃げるわけにいかないのですが。

 裁判員裁判をきっかけに裁判用語を日常用語に置きかえる作業というのがなされていて「裁判員時代の法廷用語」(日本弁護士連合会裁判員制度実施本部 法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチーム編)と言う本も出ています。法律用語は,歴史もあり,短い言葉に複雑な意味を込めているので,これを日常用語に置きかえるというのは下手をすると元々の意味を変えてしまう危険もあって大変な作業だったようです。ご努力に頭が下がります。これが新しい時代の「法律用語辞典」かもしれません。

 で,ちょっと横文字言葉に戻ると,横文字言葉を日本語に替えるときにも同じ問題があります。元々の意味が変わってしまうという危険ですね。そのため,わざわざ日本語には 置きかえず,横文字のまま流通させることが多いのでしょう。
 「識字(しきじ)」と言いますが,「言葉の意味を知って読み書きができる」ことです。 ちなみに「法識字(ほうしきじ)」という言葉がありますが,「法の内容を理解して自分の生活を改善するために使いこなせるようになる」ことを言います。

 新しい言葉に出会うことはやっかいなことではありますが,新しいものごとを知ることにつながり,世界が開けます。昨日知らなかったこと,解決できなかったことが今日分かる,解決できるというのは喜びです。美味しい食べ物に出会うととっても幸せですが,新しいことを知ったときも同じではないでしょうか。歯ごたえが少々固いかもしれませんが,奥には美味なる詰め物が・・・・(笑)。


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