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コラム

法に「愛」はあるか?(弁護士 松田 幸子)
 8月18日に宮崎県弁護士会で「ジュニアロースクール」が開かれました。中高生が参加して,「契約」をテーマに若手弁護士が一生懸命準備したクイズ・講義・グループワークを体験して頂きました。日常生活に法が深く関わっていることを学ぶいい機会になったのではないかと自画自賛しております。
 クイズに絡め,1997年12月に書いた次の文章をご紹介します。
 あれから15年,東日本大震災も原発事故も体験した私達は,どこに向かうべきか,何をすべきか,考え行動しなければと焦る今日この頃です。
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  「結構ポピュラーなクイズに「法律に『愛』という文字はあるか?」というものがあります。
 正解は「ある」です。
 日本国憲法前文の第二段落は「日本国民は,恒久の平和を念願し,人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって,平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは,平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において,名誉ある地位を占めたいと思う。われらは,全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」としています。一見難しそうな固い文章ですが,何度も何度も読んでみてください。………
 いかがでしょうか?
 日本国民は世界の民族を信頼して自分達の安全と生存を確保しようとしたからこそ,戦争を放棄し,そのための武力ももたないことにしたわけです(日本国憲法9条)。そして,日本国民だけでなく,全世界の人々が恐怖や飢えや不幸な事柄から解放されて平和に暮らせることを願うのであり,そのために日本国民が率先して努力すること,つまり,まず自国から戦争を放棄することを宣言しているのです。
 「丸腰の人に暴力を振るうような卑怯なことはみんなが許さないでしょう。そんな人はいないことを私は信じています。だから,人を信頼しないことを前提とする護身用の武器を私は持ちません。皆さんも持たないようにすることをお勧めします。そしたらみんな平和に生きられますよ。」というわけです。このような考え方を完全な形で明確に憲法にうたった国は現在のところ日本以外にありません。この考え方の基本にあるのは何でしょうか?まさしく,「人間愛」「人類愛」そのものではないでしょうか。
 憲法前文は,この国をどういう考え方で作っていくかの基本的な思想を示したものです。そして,憲法は国の最高の法律であり,民法・刑法をはじめとする法律は憲法の考え方に反しないように作られなければなりません。そして,行政サービスは法律に従って行われなければなりません。もちろん,裁判は法律に従って行われます。つまり,この国が行うすべてのことは世界中全ての人々の幸福を願う人類愛に根ざしたものでなければならないはずなのです。そうでなければ,自国の人々の幸福もありえないからなのです。 きわめて単純かつ無邪気かつ明快な考え方ではありませんか。法律に「愛」という文字があるどころか,「法」イコール「愛」と言っていいと思います。

 ところで,現実はどうでしょうか。日本には憲法も法律もないのでしょうか。前に述べたことは,子どものたわ言,単なる無邪気な理想論,おとぎ話,夢なのでしょうか。

 「新ガイドライン
(注:1997年9月新しい日米防衛協力のための指針(平時,日本有事,周辺事態の3つの段階についての協力))」というのはアメリカでは「ウオー(戦争) マニュアル」と呼ばれています。電話やファクス,インターネット,Eメールまで,一定の犯罪が予想される場合に警察が盗聴することができ,盗聴されたことは後でしかわからない,場合によっては永久に本人に知らされないままになるという盗聴法(組織的な犯罪に対処するための刑事法整備要綱―注:1999年8月同法成立)など。とても恐いのですが,もっと恐いのはみんなが何も知らされないまま自分達の運命が大方決まってしまっていることです。

 子どものたわ言や夢や理想論を本気になってやっていかなければ,地球の未来はないと思うのですが。(1997年12月13日)

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