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コラム

携帯電話途中解約に伴う違約金条項に関する2つの裁判例について(弁護士 久保山 博充)
 携帯電話の長期契約割引プランの途中解約に伴う解約金(違約金)条項について,今年になって2つの地裁判決が出ています。いずれも京都地方裁判所で出されたもので,原告は同一の適格消費者団体です。一方,被告は,平成24年3月28日判決が被告NTTドコモ,平成24年7月19日判決が被告auとなっています。
 この両事件は,NTTドコモとauの携帯電話料金プランについて,
  ・契約当初から基本料金の半額とすること,
  ・契約期間は2年間,
  ・途中解約の場合,一律9975円の解約金が発生すること,
という料金プランが消費者契約法9条1号,10条に反するとして提訴したものです。

消費者契約法
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は,当該各号に定める部分について,無効とする。
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項であって,これらを合算した額が,当該条項において設定された解除の事由,時期等の区分に応じ,当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
(省略)
第十条 民法 ,商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。
 
 両裁判共に,本件解約金条項が,法9条1号「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,または違約金を定める条項」であることを前提として,同金額が「解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」であり無効となる,という点が主張され,主な争点となりました。
 しかし,両判決の結論は異なっており,NTTドコモについては,請求棄却(=原告敗訴),auについては,請求の一部認容となっております。同じ京都地裁で,同一の原告が提起し,ほぼ同様の契約内容を争点としながら2つの結論が異なったのはなぜでしょうか。
 
 これは,2つの判決において,同条「平均的な損害」の捉え方の違いから来ています。
 NTTドコモの場合,「平均的な損害」について,契約時から解約時の全期間を通した平均損害額を出しました。計算上,全期間を通しての平均損害額は30240円となり,解約料9975円は,この平均損害額を下回るものであり,法9条1号に該当しない,という結論です。
 一方,auの場合,解約時期の違いによって業者に生ずる平均的損害額には著しい差異があるため,解約時期を1か月ごとに区分し,各区分ごとに平均的損害を算定すべきと考えました。これによると,契約直後に解約した場合の業者の損害は9万6000円,その後1月ごとに損害は減っていき,23か月目の解約での平均損害額は8000円,24か月目の解約の平均損害額は4000円となります。そこで,一律9975円の解約料は,この23か月目と24か月目の平均的損害を超過するため,当該超過額の限度で本件解約金条項は法9条1号により無効とされ,また,当該部分は消費者の権利を制限しているといえ,10条により無効ともされています。

 auの判決は,業者の平均的損害について,NTTドコモの判決と比べ,より実情を踏まえた緻密な分析を行い,結果的に消費者保護に資するものとなっています。画期的な判決と言って良いでしょう。
 もっとも,上記判決は,いずれも上訴されており確定しておりません。今後控訴審での議論の推移を見守る必要があります。

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