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コラム

日弁連第56回人権擁護大会プレシンポジウムについて(弁護士 久保山 博充)
  現在,私は,宮崎県弁護士会の憲法委員会で委員長を務めておりますが,当委員会が主体となり,平成25年8月25日,宮崎市・宮日ホールにおいて,日弁連第56回人権擁護大会プレシンポジウム「憲法を変えて強い国へ?! -- 立憲主義を手放してしまう前に考えておきたいこと --」を開催いたしました。
 この件について,「九弁連便り」という九州管内の弁護士に配られる冊子に記事を投稿したので,その内容をご紹介いたします。
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 来場者数は160名。当会に憲法委員会が創設されて以降,例年のように憲法シンポジウムを実施してまいりましたが,今回が過去最高の来場者数で,憲法改正問題に対する市民の関心の高さが感じられました。
 以下,当日の内容についてご報告いたします。

 1 基調報告 ディベート寸劇「憲法変える?変えない?」
 これまでにも給費制存続を訴える市民集会などで数々の名(迷)演技を披露してくれた,宮崎県弁護士会非公認劇団「劇団てげてげ」が,今回もまたやってくれました。
 同劇団は,塩地陽介監督を中心にして,当会所属の若手会員が(半ば強制的に)スカウトされメンバーとなっている劇団です。今回は,このうち4名が改憲派と護憲派に分かれて激論を交わすという「寸劇」を行い,「日本国憲法は押しつけ憲法なのか?」,「今の9条では日本を守れないのか?」,「緊急事態に対応できる憲法とは?」,「改正しやすい憲法であるべきか?」などなど,笑いも交えた約20分の熱演によって,憲法改正にまつわる諸論点を分かりやすく来場者に伝えました。
 来場者アンケートの中には,「今時の若い男(←筆者注:改憲派の立場で演じました)は,あんな考えなのか,と驚きました」という回答がありました。あくまでもシナリオに沿った「劇」だったのですが,来場者に本音の議論と思わせるほどに迫真の劇だったということでしょう。

 2 基調講演
 次に,東京弁護士会所属の伊藤真さんを講師とした基調講演が行われました。
 伊藤さんは,言わずと知れた司法試験受験界の「カリスマ講師」ですが(私自身も伊藤さんの講義を受けて司法試験を突破した人間です),同時に,日弁連憲法委員会副委員長,法学館憲法研究所所長であり,「憲法の伝道師」として,日本国憲法の理念を伝えるための講演や執筆活動を精力的に行っている方でもあります。
 伊藤さんの講演では,改憲を論ずる前提として,憲法は何のために存在するのかを理解することが重要であると説かれました。民主主義国家にあっても多数派による権力行使に歯止めの必要があること,その権力=国家に対する歯止めが憲法なのであり,他の法律とは全く役割が異なること,自民党の憲法改正草案は,この「国家に対する歯止め」という憲法の本質を揺るがすものであることなどが,耳に心地よい流ちょうな語り口で語られました。「立憲主義とは何か」という,一見,市民の皆さんには取っつきにくいテーマが,見事にかみ砕かれて,本当に分かりやすく伝わる,素晴らしい講演でした。
 憲法は法律の親玉であって国民もしっかりと守るべきという「常識的な考え」が,実は間違っているということを知った来場者は,一様に衝撃を受けたようです。

 3 パネルディスカッション「憲法と私たち 〜震災と米軍基地の現実から考える」
 休息をはさんで,パネルディスカッションを行いました。私がコーディネーターを務め,3人のパネリストと共に,震災と米軍基地の現実から憲法改正を考えてみようという試みでした。
 パネリストは,基調講演から引き続き伊藤さんと,被災地支援,特に福島の子供達の支援活動を行っているNPO法人アースウォーカーズ事務局長小林亜衣さん,東奥日報社編集委員兼論説委員で,米軍基地や自衛隊問題に造詣の深いジャーナリスト斉藤光政さんにそれぞれお願いしました。
 1つ目の「震災と憲法」というテーマについて,まず,震災によって被災地の人権が侵害されている現実が小林さんや斉藤さんから語られました。そして,この被災地の現状を踏まえて伊藤さんから解説がなされ,このような震災に対応するためと称して自民党草案に盛り込まれている「国家緊急権」は,震災に適切に対応できないばかりか,強度の人権制約の危険を孕んでいること,震災への対応は,現行憲法の枠組みの中における制度運用の問題であり,改憲によって解決する問題ではないことなどが結論づけられました。
 2つ目の「米軍基地と憲法」というテーマでは,主に斉藤さんから,米軍の世界戦略に対して,これまでの憲法9条が不十分ながらも歯止めとなっていたことが語られ,憲法が改正されて自衛隊が国防軍となった場合のシミュレーションもなされました。日本が自国を守るだけであれば,現行憲法の枠内で対応できること,憲法改正の眼目は,日本を,集団的自衛権の名の下に「外国に戦争に行く国」に変容させることにある,という斉藤さんの言葉は,来場者にも重く受け止められたようでした。
 なお,時間不足でほとんど取り上げることができませんでしたが,会場から膨大な数の質問が寄せられました。中には,小学4年生の方からの「憲法が変わると生活の何が変わるの」という質問も飛びだし,会場を沸かせました。

 4 おわりに
 以上,3時間という短時間のシンポジウムの中に盛りだくさんの内容を詰め込んだため,充実していたと言ってもらえるか消化不良と言われるか不安でしたが,来場者アンケートは総じて好評で,シンポジウムは成功裏に終了いたしました。
 当会では,今回のシンポジウムに先だって,憲法96条改正に反対する会長声明及び総会決議,街頭宣伝活動など,憲法改正問題に関して非常に積極的に取り組んできましたが,今回のシンポジウムは,これまでの活動の総決算にふさわしい盛り上がりを見せました。
 憲法改正問題がこれで解決したわけではなく,今後とも,全国民のレベルで議論を続けることが必要でしょうが,今回のシンポジウムが,少しでも市民の皆さんに「立憲主義」について考えてもらうための契機となってくれればうれしく思います。
以上

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